さらば、さるびあ丸2

こんにちは。今回はさるびあ丸2の八丈航路引退航海を島からの写真を交えつつお送りします。今回は浅沼(青)といが(山吹)の共同執筆でお届けします。

竹芝出港

東京発八丈島行き、帰島するこの日は普段の橘丸ではなく偶然にもさるびあ丸2が代役であり、しかもその最終航海の日です。
大勢の人が竹芝に集い、各々自慢のカメラやスマホで心ゆくまでその最後の勇姿を収めていました。
いざ乗船をすると船内は思っていたよりも人が少なかったです。桟橋にいた多くの人は乗船をせず、2隻のさるびあ丸の出航を見届けに来ていたのだと思いました。
時刻は2230、いよいよ出港。新さるびあ丸との同時出港、そしてさらに橘丸の見送り。まさに最初で最後の大イベント。船上から出港を見比べ、その性能の違いを実感しつつ出港作業の様子を見守ります。
大勢の人々に見送られ、さるびあ丸2は竹芝桟橋を後にしました。

最後の朝入港

島民の朝は早い。時刻は0330。夏至を過ぎたばかりのこの時期であっても辺りはまだ薄暗い。最後の三宅島下り便は三池港となりました。梅雨で不安定な天気が数日続いていましたが、うす曇りで青空も覗いています。下船客は来島自粛解除まもないこともあってか疎らです。私はここから乗船します。

三池港を出港したさるびあ丸は1時間ほどで御蔵島に接岸します。この日は南西寄りの風が強く吹いています。雲が低く垂れこめた御蔵島に近づき接岸作業が始まります。船は接岸する岸壁を行き通り過ぎ、右旋回を開始します。強力な潮流でみるみる押し戻されながら、船首のロープが投げられ無事桟橋の先端にロープが掛かりました。船はゆっくり回頭し、船尾を御蔵島に向けます。強風に吹かれ5分ほど過ぎたでしょうか、なかなか岸壁と平行になりません。じわじわと岸壁に近寄り定刻を大きく過ぎ着岸しました。乗降客は僅かです。伊豆諸島の厳しい自然環境を窺い知れる入港でした。

強風と潮流によりなかなか岸壁に寄れず、船首が岸壁と離れている。

底土港

さるびあ丸2は定刻より少し遅れて八丈島底土港へ接岸。
船長や町長などの挨拶を挟み、あっという間に出港の時間がやってきました。
乗船開始のアナウンス後、さっきまで船に乗って来ていたはずの大半の人々が再び乗船します。この光景は俗に言う「着発」。今日に限っては、着発の方が多かったように思えました。
鳴り響く八丈太鼓の音、手を振る人々、船と見送る人々を繋ぎ舞う七色のテープ。
長音の汽笛を何度も鳴らしながら、さるびあ丸2は底土港を離岸。青空に映えるその白い船体を、見えなくなるまで見送りました。
自分自身、大島や新島に行く時お世話になった船なので寂しかったですが、こうして離島航路が受け継がれていくのだと思いました。

御蔵島抜港

折り返し東京行きのさるびあ丸は八丈島を離れ、御蔵島を目指します。途中御蔵島上り便欠航の放送がありました。その後、御蔵島沖に差し掛かり、欠航となったものの集落に近い針路を取ります。御蔵島島民と最後の別れを告げる長音が響きます。

下船の準備を整え三宅島は下りと同じ三池港に入港です。三池港が迫ると聞き覚えのある太鼓の音「神着木遣り太鼓」が聞こえてきます。今年は7月の祭りが中止になり、この夏この太鼓が響いたのは最初で最後になると思われます。木遣りが賑やかに最後の入港を迎えます。多くの島民の見届ける中セレモニーを終えました。足が速く、時化でも遅延することが少ない島民愛された船との別れでした。

青い空と海と溶岩の黒、溶岩の上に生えた緑、美しい「白い船」最後の共演

おわりに

以上、島民視線を交えつつお伝えしました。島民にとって欠かせない存在だったさるびあ丸2と入れ替わりで就航したさるびあ丸は現在、大島航路で走っており伊豆諸島南部へは秋ごろ就航となります。

浅沼・いが